アジアキャットクラブ(ACC)ではマンチカンの交配について、

・足や背骨に変形のない猫を交配し、極端に短足な猫が生まれないように注意する
・ドメスティックキャットと交配する際は、マンチカンのスタンダードに近い猫を選ぶ

ことが重要だと考えています。

短足マンチカンについて

現在マンチカンの短足同士の交配において胸浅や背骨の湾曲など奇形が出やすい事などの問題があり、国内では一般的に短足同士の交配は禁止となっています。

しかし、米国の団体においてはマンチカンは足の長骨が短くなる遺伝子を持ってはいるものの、この遺伝子は脊椎を含む他の骨には影響を及ぼすことはなく、マンチカンは関節炎になりにくく、年をとっても他の猫種に比べて歩いたり動いたりするのが難しくなることはないとされており、短足同士の交配は禁止とされてはいません。

この違いは、国内では短足のマンチカンは足が短く見えれば見えるほどよいという価値観が影響していると考えています。

足がまっすぐな猫よりも足が変形している猫の方が足は短く見えることがあり、またマンチカンは胴長のボディタイプではありませんが、胴が長い方が相対的に足が短く見えるということもあり、そのような猫が良いとされる傾向があります。このような良いとされる猫を繁殖していくと、足や背骨の変形がより強くでることになり胸浅(漏斗胸)も出てくるようになります。

ACCとしてはマンチカンの短足同士の交配は禁止としていませんが、足や背骨に変形のないマンチカンを交配するべきだと考えており、また、変形がなくとも運動能力に影響が出るような極端に短足の猫が生まれないように注意するべきだと考えています。 これらの方針はウェブサイトや会報を通じ会員にも周知をしていきます。

マンチカンの遺伝子について

マンチカンの足を短くする遺伝子は顕性(優性)遺伝とされています。

この遺伝子に関して致死遺伝子であり、生まれた子猫が突然死するというような話が散見されますが、マンチカンの遺伝子の研究において研究対象の集団にマンチカン変異遺伝子のホモ接合体を持つ個体がいなかったことや、同腹子数の減少などから初期胚段階での致死性であると考えられているようです。 

Ann-Kathrin Struck, Marina Braun, Kim Aline Detering, Peter Dziallas, Jasmin Neßler, Michael Fehr, Julia Metzger & Ottmar Distl. A structural UGDH variant associated with standard Munchkin cats.2020/6/30.https://bmcgenomdata.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12863-020-00875-x

※短足のマンチカンはヘテロ接合型なので、短足同士の交配でも長足との交配でも短足と長足の子猫が生まれる可能性があります。また、長足マンチカン同士の交配で短足が生まれることはありません。

異種交配について

マンチカンとドメスティックキャットとの交配は遺伝子プールの拡張により奇形発生の減少に寄与し、マンチカンのスタンダード(細身のドメスティックボディー)に近づける上でも効果的であると考えられるため、ACCでは2021年11月1日からマンチカンとドメスティックキャットの交配が認められています。

ただし、上記の通りマンチカンの変異遺伝子を持つ短足の猫はヘテロ接合型なので短足の猫と長足の猫の差はそれほど大きくありません。遺伝子プールを拡張するためとはいえ、異種交配をするドメスティックキャットがマンチカンのスタンダードから大きく離れることは好ましくないと考えており、マンチカンのスタンダードに近い猫を選ぶことを推奨します。

また、特定の品種の特徴を強く持つ猫(スコティッシュの折れ耳など)をドメスティックキャットとして用いることは禁止となっています。 

※マンチカンと他の猫種の交配が認められている品種(ミヌエット等)においては、短足を除く特徴の大部分が交配先の品種によるものなので、マンチカンのスタンダードに近い猫は好ましくありません。